
預け在庫の枚数を正確に把握する計算モデル|期首在庫±実績差分【2026年版】
顧客先に預けたリネンが「月末になると数が合わない」「かといって毎回ぜんぶ数えるのは無理」——リネンサプライ事業者なら誰もが抱える悩みです。この記事は、専用ハード(RFIDや重量計)を入れずに、預け在庫の枚数を計算で把握する一点に絞って解説します。
結論を先に言い切ります。顧客先の預け在庫は、毎回の全数カウントをやめて「期首在庫+累計納品数−累計回収数」を品目別に積み上げる計算モデルで把握できます。配送のたびに回収数・納品数をその場で記録し、その実績差分を在庫台帳へ反映していくのが、配送起点でもっとも現実的な方法です。記録されない紛失・破損による実数ズレは、定期棚卸の実数突合で補正します。
「全数カウント」では預け在庫の把握が破綻する理由(結論先出し)
預け在庫は「期首の数」を起点に「出入りの差分」を足し引きすれば追えます。にもかかわらず多くの現場が破綻するのは、訪問のたびに全数を数え直そうとするからです。発想を「数える」から「差分を積み上げる」に切り替えるのが出発点になります。
預け在庫とは:事業者所有・契約先へ貸与で数量責任は事業者側に集中する
日本リネンサプライ協会(JLSA)の定義では、リネンサプライとは事業者がリネン製品の在庫を保有し、契約先へ貸与したうえで、使用済み品を定期回収・洗濯仕上げ・納品し、補修補充を続けるサイクルを指します。ここで重要なのは在庫の所有者が事業者側だという点です。
預け在庫は顧客の資産ではなく、自社の資産が顧客先に出払っている状態。だから数量責任は事業者側に集中し、「いま何枚、どこにあるか」を持ち切る義務も事業者にあります。
この所有構造が、後述する計算モデルの前提になります。借り手側の資産管理ツールではなく、貸す側=サプライ事業者の視点で在庫を持つ必要があるのです。
訪問のたび全数を数える方式が破綻する理由(品目数・訪問頻度・現場負荷)
全数カウント方式は、品目数×顧客数×訪問頻度の積で作業量が膨らみます。シーツ・枕カバー・タオル・ユニフォームと品目が分かれ、顧客が数十件、訪問が週数回ともなれば、現場で毎回全数を数えるのは非現実的です。
リネンサプライは回転規模の大きい労働集約型産業です。矢野経済研究所「リネンサプライ市場に関する調査(2024年)」によれば、2023年度の国内リネンサプライ市場規模は4,551億円(前年度比108.5%・3年連続回復)に達し、ホテル・病院・フードなど9分野で日々大量のリネンが回転しています。この回転量を毎回手作業で全数カウントしようとすれば、現場負荷で記録自体が崩れ、かえって数が合わなくなります。

把握の計算モデル:期首在庫±実績差分の積み上げ【本記事の核】
ここが本記事の核です。預け在庫は、出入りの「イベント」を品目別に積み上げるだけで自動的に追えます。全数を数えるのではなく、変化分だけを記録するという考え方の転換です。
基本式:預け在庫=期首在庫+累計納品数−累計回収数(品目別の入出庫式)
計算モデルの基本式はシンプルです。
預け在庫(現在数)= 期首在庫 + 累計納品数 − 累計回収数
これを品目別・顧客別に持ちます。納品すれば顧客先の在庫は増え(+)、使用済みを回収すれば減ります(−)。この入出庫を足し引きするだけで、全数を数えなくても現在の預け在庫が常に分かります。総枚数ではなく品目別に式を回すのが要点で、これは品目別・顧客別の在庫台帳を持つことが前提になります。
入出庫イベント別 在庫増減早見表(納品+/回収−/補充+/紛失・破損計上−)
預け在庫を動かすイベントは、増やすものと減らすものに整理できます。記録すべきはこの4種類だけです。
| 入出庫イベント | 在庫への影響 | 記録するタイミング |
|---|---|---|
| 納品(清潔品を渡す) | +増加 | 訪問時・納品数を入力 |
| 回収(使用済みを引き取る) | −減少 | 訪問時・回収数を入力 |
| 補充(不足分の追加投入) | +増加 | 補充発生時に入力 |
| 紛失・破損の計上 | −減少 | 棚卸の実数調整時に確定 |
納品・回収・補充は配送現場で発生するため、その場で記録します。紛失・破損は現場では分からないことが多く、定期棚卸の実数突合で確定して計上するのが現実的です。

期首在庫の起点の決め方と「品目別・顧客別」に持つ粒度
計算モデルの精度は、起点となる期首在庫の確からしさで決まります。起点がずれていれば、その後どれだけ正確に差分を積んでもズレは残ります。
期首在庫は、初回の実地棚卸、または契約時の貸出台帳を起点に確定します。初回だけは品目別・顧客別の数量を実数で固め、それ以降は回収・納品の差分を加減算するだけにします。粒度は必ず「品目別×顧客別」で持ちます。総枚数だけだと、後で差異が出たときに「どの品目・どの顧客で減ったか」を特定できないからです。

計算モデルに実績を流し込む:回収数・納品数の現場記録
計算式が正しくても、流し込む実績データが歪んでいれば結果は合いません。差分の精度は「どこで記録するか」で決まります。鍵は、転記を挟まず発生源で記録することです。
配送員のスマホ現場入力で回収数・納品数をその場で記録する
もっとも現実的なのは、配送員がスマホブラウザで回収数・納品数をその場で数量入力する方式です。リネンサプライHUBはこの配送員のスマホ現場入力を最大の特長としており、専用アプリのインストールは不要です。入力された実績はそのまま計算モデルに流れ込み、品目別・顧客別の預け在庫が自動で増減します。
なおリネンサプライHUBはRFIDタグやハンディ専用機を採用せず、数量手入力+自動計算を基本としています。スマホカメラでのバーコード読取はPhase2(検討中)の機能で、現時点で「できる」とは案内していません。専用ハードへの投資なしに計算モデルを回せる点が、貸す側の在庫把握として現実的です。
紙伝票併用時は事務入力モードで二重入力を避け、転記起因のズレを断つ
現場のスマホ入力が難しい顧客には、従来どおり紙伝票を使い、後から事務所でまとめて入力する事務入力モードを併用できます。ここで避けたいのは、紙とシステムへ別々に書き写す二重入力です。同じ数字を二度書けば、その分だけ転記ミスの確率が上がります。
数が合わない原因の多くは計算式ではなく「記録の入り口」にあります。発生源で一度だけ記録し、転記を挟まないことがズレを断つ近道です。
転記が在庫精度と請求にどう影響するかは、二重入力(転記)が生む損失で詳しく試算しています。

計算モデルの限界と補正(棚卸し・差異の詳細は別記事へ委譲)
計算モデルは万能ではありません。限界を正しく理解し、別の手段で補うことで初めて実数に近づきます。
差分の積み上げだけでは紛失・破損の実数ズレは閉じない
計算モデルが反映できるのは「記録された」回収・納品だけです。記録されない紛失・破損・記録抜けが起きると、計算上の在庫と実数は少しずつ離れていきます。これは計算モデルの構造的な限界であり、差分を丁寧に積んでも閉じません。
だからこそ日次の差分積み上げ×定期棚卸の実数調整という二段構えが必要です。日々は計算モデルで在庫を追い、定期的に実地棚卸で実数を確認して、ズレを紛失・破損として計上し直します。リネンサプライHUBでは、回収数・納品数の現場入力から預け在庫を自動増減させ、棚卸での実数調整・差分処理まで対応します(Phase1実装済)。

棚卸し突合の手順・数量差異レポート・弁償の論点は別記事で詳述
本記事は計算モデルに固有化しているため、棚卸の具体的な突合手順、数量差異レポートの作り方、紛失・破損時の弁償の論点には踏み込みません。これらは別記事で詳述します。手段別の優劣比較(手入力・重量・RFID)や在庫管理の全体像は、預け在庫管理の完全ガイドを、システム全体の機能・選び方はリネンサプライ管理システムの完全ガイドを参照してください。
なお業界の産業分類上、リネンサプライ業は日本標準産業分類(e-Stat)で「7813」に位置づけられる生活関連サービス業です。エンティティとして正しく扱うことは、計算モデルを設計する前提整理としても役立ちます。
まとめ
顧客先の預け在庫は、毎回の全数カウントをやめ、「期首在庫+累計納品数−累計回収数」を品目別・顧客別に積み上げる計算モデルで把握できます。鍵は3点です。第一に、起点となる期首在庫を初回だけ実数で固めること。第二に、回収数・納品数を配送現場で転記せずに記録すること。第三に、計算モデルでは閉じない紛失・破損は定期棚卸で補正する二段構えにすること。専用ハードなしでも、記録の積み上げで在庫を持ち切ることは十分に可能です。
リネンサプライHUBなら、配送員のスマホ現場入力から品目別・顧客別の預け在庫を自動で増減し、棚卸の実数調整まで一気通貫で行えます。1名あたり月額2,980円(6名以上・税込)から、14日間の無料トライアル(クレカ不要)で全機能をお試しいただけます。
よくある質問
預け在庫の枚数は毎回全数を数えないと把握できませんか?
いいえ。期首在庫を起点に、訪問ごとの回収数・納品数の実績差分を品目別に積み上げれば、毎回の全数カウントなしで預け在庫を算出できます(預け在庫=期首在庫+累計納品数−累計回収数)。実数とのズレは定期棚卸で補正する二段構えが現実的です。
計算の起点になる「期首在庫」はどう決めればよいですか?
初回の実地棚卸、または契約時の貸出台帳を起点に、品目別・顧客別の数量を確定します。それ以降は回収・納品の実績差分を加減算するだけで現在数が追えます。起点の精度が全体精度を左右するため、初回だけは実数で固めるのが要点です。
品目をまとめた総枚数だけで管理してはいけませんか?
総枚数だけだと、差異が出たときに「どの品目・どの顧客で減ったか」を特定できません。計算モデルは品目別・顧客別に在庫台帳を持つことを前提とし、差分も同じ粒度で積み上げます。粒度を保つことで、紛失・破損の所在が後から追える状態になります。
RFIDやハンディがなくても計算モデルで把握できますか?
できます。回収数・納品数をスマホブラウザで数量手入力し、その実績から預け在庫を自動増減させる方式で品目別の把握が可能です。リネンサプライHUBはRFID・ハンディ専用機を採用せず、数量手入力+自動計算を基本としています。スマホカメラでのバーコード読取はPhase2(検討中)で、現時点で「できる」とは案内していません。
差分を積み上げても実数と合わなくなるのはなぜですか?
計算モデルは記録された回収・納品しか反映しないため、記録されない紛失・破損・記録抜けがあると実数とズレます。これは計算モデルの限界で、定期棚卸の実数突合で補正します。突合の具体手順や数量差異レポートの作り方は別記事で詳述します。
この計算モデルはリネンサプライHUBでどこまで自動化できますか?
契約マスタ・品目マスタを前提に、回収数・納品数の現場入力から顧客先預け在庫を品目別・顧客別に自動増減し、棚卸での実数調整・差分処理まで対応します(Phase1実装済)。会計連携はCSVエクスポートのみ、洗濯工場の工程管理やAIによる差異分析は対象外です。導入実績ゼロ起点のため、効果は一般論として案内します。
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